安全保障とは?

アマルティア・セン著、東郷えりか訳『人間の安全保障』(集英社新書,2006)を読了。筆者は過去にノーベル経済学賞を受賞した著名な方です。

この前レビューした『思考のフロンティア 公共性』に名前があったので、読んでみようと決意。

人間の安全保障 (集英社新書)

人間の安全保障 (集英社新書)


「安全保障」と聞くと、9.11以降は、つい軍事面のことを想像してしまいがちだけど、この本はそれだけではない。(インドの核武装についての論考もあるが。)
以下、引用。

  幸い、基礎教育を充実させ、その効力を拡大すれば、人間の安全を脅かすほとんどの危険にたいして、おおむね強力な予防効果を発揮することができます。(中略)最も基本的な問題は、識字力や計算能力がないこと自体が一種の不安であるという、根本的な事実とかかわっています。読み書きや計算、あるいは意思伝達ができないことは、とてつもない困窮状態です。(中略)学校教育を充実させることが何よりも直接的に役立つのは、こうした欠乏状態をじかに改善できるからなのです(p10)。

こんな時期だから、今まで3年間のことを考える機会が多いわけですが、大学に入って、いろんなゼミに入りながら考えてきたことはただひとつ。

社会に対して教育はどのような役割を担っているのか。そしてそのなかで教育ができることは何なのか。

いろんなアプローチから考えてきたつもりだったけど、だんだん自分の問題関心は「学校」にシフトしているような気がしている。

もちろん、学校がよくなれば社会もよくなる、などと短絡的に考えているわけではない。
ただ、なかば強制的にであれ、たくさんの人々を一度に集めて、その人たちに発信できる場は、そうそうない。
そう考えてみると、学校は、とても可能性を持った場所にも見えてくる。

グローバルな視点で見ると、この本で指摘されているような「基礎教育」が必要であることは間違いない。学校教育が「人間の安全保障」のために不可欠であることを改めて痛感。