朝青龍出場停止問題

以前から行動に注文が付けられていた大相撲の横綱朝青龍。夏巡業の休場届を出しながら、モンゴルでサッカーをしていた問題で1日、日本相撲協会から九州場所千秋楽(11月25日)まで2場所連続出場停止と減俸30%(4カ月)の厳しい処分が下された。同じ減俸処分を受けた高砂親方は、朝青龍をどうして止められなかったのか。また、処分に対して相撲ファンはどう受け止めているのか。

 弟子の不始末に、師匠の高砂親方(元大関朝潮)は、針のむしろに座らされた1日となった。東京・両国国技館で午後1時から始まった緊急理事会。高砂親方日本相撲協会の理事でありながら、処分を審議する理事会の場から約20分間、閉め出される異例の事態となった。

 その間、高砂親方は「(朝青龍と一緒にサッカーをした)中田英寿氏から、部屋に(謝罪の)ファクスが来ましたよ」と言ったきり、背中を丸めて裁きの扉が開かれるのを、流れる汗をふきながら待った。いつもは広報部長として任されていた理事会終了後の記者会見からも外された。

 高砂親方朝青龍。弟子を上から抑えつけない指導は、朝青龍の才能を大いに伸ばした。「心技体」の「技体」については文句ない大成ぶりだ。ところが肝心の「心」の教育がおろそかになった。

 03年12月に先代高砂親方(元小結・富士錦)の葬儀を無断欠席したり、04年7月には泥酔して部屋の玄関ドアガラスを破損。今回も含めた度々の無断帰国や、けいこに現れないこともあった朝青龍高砂親方は「自分の責任において結果を出せばいいと思っているのだろう」と黙認。それを「何も言えないなんて情けない」と苦々しく見る親方衆もいた。

 今回の処分に対して高砂親方は「私も真摯(しんし)に受け止めている。21回の優勝が無駄にならないよう側面から支援したい。いい試練と思って前向きにやるしかない」と話しながらも、「気分の浮き沈みがあるから、けがを治してテンションをどう上げていくか……」と心配も隠さなかった。

 朝青龍はこの日、都内の自宅で謹慎。夜には前日から通院している病院の主治医を呼んで治療を受けた。主治医によると、朝青龍は「相撲が取りたい。今も相撲と日本人が好きだ」などと話し、処分にはショックを受けていた様子という。【上鵜瀬浄、山本亮子】

 ◇強いだけの力士を育てているのか

 東京・両国の国技館周辺では、「横綱同士の対戦が見られず残念」といったファンのほか、「親方の教育が悪い」など相撲界の構造的問題を指摘する声が相次いだ。

 仕事で近くに来ていた東京都世田谷区の会社員、西脇博光さん(54)は「しばらくぶりに横綱同士の対戦が見られるようになったのに。2場所出場停止は厳しいが、この騒動を個人の問題にするのではなく、相撲にかかわる人がもう一度、『相撲道とは何か』を学んだ方がいい」と指摘した。

 国技館近くで土産物店を営む40歳代の女性は「昔と違い、今はあいさつすらきちんとできない力士が多い。親方衆がきちんと若手力士の教育をできていない」と語った。

 一方、東京都渋谷区のモンゴル大使館では、いつもと変わりなく業務を続けた。ある職員は「朝青龍はモンゴルでは尊敬される存在だけに今回の騒動は残念だ」と話した。【永井大介

毎日新聞 2007年8月1日 20時22分 (最終更新時間 8月1日 23時06分)

騒動の是非は置いといて、すごく気になるのは、この議論において「悪いのは親方がきちんと『教育』してなかったからだ」ということ。
「相撲道」なるものがあるらしいけど、そういったものは教育可能、伝達可能なものなのだろうか。
うーむ。