いわせておくれよ

土井隆義さんという社会学者は近著の『友だち地獄』のおわりにこんなこといってる。

では、このような「自分らしさの檻」から脱出し、豊かで安定した自己肯定感を培っていくためには、どのような方策が有効なのだろうか。当然のように考えられるのは、自分を世界の中心に置くのではなく、逆に自分を相対化する視線を身につけることだろう。そのためには、今流行りの自己分析などではなく、むしろ意外性に満ちた体験や、異質な人々と出会う経験の積み重ねこそが重要である。(…中略…)
もっとも、今日の若者たちが似たもの同士で固まる傾向を強めてきた背景に、本書で考察してきたような社会的根拠があるとすれば、意外性に満ちた体験や異質な人間と出会う経験の重要性をいくら叫んでみたところで、それは現実の諸条件を無視した「悪しき啓蒙」にすぎなくなってしまうだろう(p.225)。

所詮はさー、「悪しき啓蒙」だよわかってるよそんなことー。でもいいでしょ。書かせてよ。
というわけで、おそらく誰もみてないだろうけど新入生(学部生)に向けて。

  • 入学おめでとう。そして机の上でごりごり書き書きするような勉強は、たぶんもう半分以上終わったよ。ぼくは入学してこのことを実感した時、めちゃめちゃうれしかったのを覚えてる。4年間は恐ろしいほどあっという間に過ぎていくよ。有効に使おう。
  • いきなり落とすようで恐縮だけど、大学の授業に多くを期待しないほうがいい。これは教授のセンセイがたが悪いというよりも、所詮授業で扱うことなんか氷山の一角なんだってこと。授業は「ネタの集積」ととらえるべし。自分が特に興味もった「ネタ」を掘り下げていけばいい。
  • 上で言ったことと関連するけど、1・2年生のうちは概論系の授業が多いからあんまし面白くないかも(こんなこと書いちゃまずいかな…)。
  • やっぱり本を読むことは書いても書き足りないぐらい重要。よく「頭でっかち」はいかんっていう人がいるけど、頭がでっかくなるくらい本をたくさん、そして深く読めれば、見える世界もまた違ってくると個人的には思う。
  • よく言われることだけど、本はできれば買って読んだほうがいい。借りた本は頭に残んない。
  • ただ、そうは言っても手持ちの財布の中身には限界があることも事実。だから本を買って読むことは重要なんだけど、大きな本屋さんや図書館でどんな本があるのかなーってうろうろしてみることも大事。行きつけの書店・図書館で、どんな本がどんな場所に配置されているかがすぐわかるようになれば、それだけで少し賢くなったといえる。
  • あと、自分が実践してるのは毎月一定量、新書を買うこと。新書は玉石混淆だけど、いまどんな問題が社会の関心事になってるのかをつかむのには最適。ハードカバー買うより安いしね。自分は学部時代ときどき昼飯我慢して買ってた。
  • どんな本を読めばいいかって聞かれることが多いけど、まずは「○○学入門」って本を買ってみて、巻末についてる参考文献表で面白いのから読んでみるといいんじゃなかろうか。
  • ただ、いかにも難しい本を読んで、打ち負かされる経験も必要。読んで理解できなくてもとりあえず内容を飲み込んでみる。そのあと雑多な読書を続けると急に理解できる瞬間が訪れることもある。これが読書の一番の快感ですな。
  • 自分の専攻分野に限定せず、興味のあることに禁欲的であることはまったくない。卒論書くときに、はじめて自分の研究テーマを考えればいいことだしね。
  • それでこれは本を読むことよりも重要かもしれんけど、「できる」先輩をつかまえて仲良くなっておこう。「できる」先輩であるかどうかは君自身の判断で構わない。そういう人と一緒にいるだけでも成長できる。まぁ、なんでかは内田樹さんの『先生はえらい』でも読んで考えてください。
  • なんか勉強しててわかんないことがいっぱい出てくるかもしれんけど、それでいいの。むしろ、考えが深まるほどわからないことは増えていくもの。むしろ、「わかった気」でいることのほうが危険。

とりあえず思いついたのはこんな感じかな。また何か出てきたら追加していきます。