とりあえず貼っときます

出典は朝日の記事(http://mytown.asahi.com/osaka/news.php?k_id=28000000808300003)。

府教委 巻き返し決意 学力調査
2008年08月30日

 文部科学省が29日に発表した全国学力調査の結果で、大阪府の公立小中学校の児童・生徒の学力が昨年に引き続き全国平均を大きく下回った。教育関係者は戸惑いをみせる一方、昨年から準備してきた学力向上施策を着実に進め、巻き返しを図ろうと意欲を見せる。

 ◆習熟度別授業を拡大 独自の新テスト導入

 「教育日本一」を掲げる橋下徹知事は29日夕、報道陣に「教育委員会と教職員はもっとしっかりしろと言いたい」と厳しい口調で語った。府教委の綛山(かせやま)哲男教育長も、「改めて大阪の抱える課題が大変厳しいということを認識した」とコメント。授業力の改善をテコに、学力向上をめざす決意をにじませた。

 府内で今年4月の調査を受けたのは、府内の公立小に通う6年生約7万9千人と、公立中の3年生約6万4千人。

 昨年同様、知識を問う「A問題」よりも応用力を問う「B問題」で全国平均との開きが大きく、特に中学校でその傾向が目立った。また、大阪と全国との学力上位層の正答率の差は昨年よりも縮まったが、下位層では逆に広がり二極化の傾向が強まった。

 小6の国語はB問題で沖縄、北海道に次ぐワースト3位。読むことや書くことに課題がみられた。算数はA、Bともに全国との差が詰まったが、小数の計算や記述式の設問が苦手な児童が多かった。

 中3の国語はA、Bともに沖縄、高知に次ぐワースト3位。B問題は全国との差が5・6ポイントも開きがあり、特に書く能力が問われる設問で正答率が約40%だった。解答が白紙の「無答率」も昨年の8・5%から12・9%に増え、全国と比べても4・2ポイント高かった。数学はBがワースト3位。証明問題など記述式に課題がみられた。

 生活習慣や学習環境について児童・生徒や教職員に尋ねる調査では、昨年同様、宿題や復習をしている割合が全国平均よりも低く、朝食を食べている割合の差も顕著だった。

 大阪市西成区のある公立中学校では、親が夜の仕事に就いたり病気だったりする家庭も多く、朝食を食べていない生徒も多い。数学の教師(48)は「家庭訪問を繰り返して親と一緒に生活リズムの立て直しをめざしているが、各家庭の事情は複雑。地道にやるしかない」とため息をつく。

 府教委は2学期から、府内の公立小中学校で、放課後に地域の学生や退職教員らが授業の復習や宿題を教える「おおさか・まなび舎(や)」や、理解度に応じてグループ分けする習熟度別授業も広げていく。

 指導主事らによるモデル授業を教職員専用のウェブ上に流す試みを9月から本格化。単元ごとのテストや宿題、自習に使えるワークブックの作成にも乗り出す。さらに今年度から府独自の学力テストを始める予定で、小学4〜6年に国語と算数、中学生に国語、数学、英語を出題して到達度をみる。
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 【学力問題に詳しい米川英樹・大阪教育大教授(教育社会学)の話】
 今年も下位だろうとは予想できた。1、2年で学力は向上しない。しかし悲観することはない。府教委が打ち出している学力向上策の方向性は間違っていない。家庭や地域は教師たちをもっと励まし、一緒に知恵を出し合うべきだ。子どもたちの生活習慣の改善が課題だが、これから親になる世代への「親学」が、効果があるのではないか。

こっちは、毎日の社説(http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20080831k0000m070101000c.html)。

社説:学力テスト このまま続ける必要があるか
 今春小学6年生と中学3年生に実施された全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果が出た。文部科学省によれば、少し難しくしたので正答率低下もあるが、全体的な学力低下はない。おおむね昨年の第1回と同様の傾向で活用力に課題があるという。

 ならば、毎年、しかも全員対象の悉皆(しっかい)方式で巨額の費用(今回の予算約58億円)をかけてやり続ける意味があるのか。専門家も「毎年は無用」「抽出調査で十分」などと指摘する。自民党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」は今月「目的とコストが見合わない」と無駄な事業だとした。

 これに対し文科省は「国全体の状況を見るだけなら悉皆調査である必要はないが、児童生徒一人一人の状況をつかんで指導に生かせる」「全国の中で自分の学校や地域がどういう位置にあるか分かる」「膨大なデータからいろいろな切り口で分析ができる」と言う。

 どうだろうか。

 さまざまな形の学力テストは多くの自治体で独自に行われており、各学校の特徴的な指導課題は示されている。子供の特性や教科学習の到達度も現場教師が最もつかみ、向上に腐心しているはずだ。国語と算数(数学)を基礎、活用に分けて行う程度の全国一律テストで教わるまでもない。まして子供にとって1回限りのテストで十分な個別指導資料になるだろうか。

 そして、本来参考資料である都道府県別平均点が「ランキング」と意識され、教育委員会が一喜一憂するのはおかしい。情報は公開されるべきだが、それで無用な競争意識や圧迫感を現場に与えるなら、過熱した60年代までの全国学力テストと同じ轍(てつ)を踏む。

 今回の調査でも、平均点の高い所では家庭学習や規則正しい生活習慣、少人数学級など指導の工夫と成績の相関が見られるという。自明のことだ。また、地域によっては、経済的格差など、学校や学習指導を超えた社会要因も影を落としているとみられる。これもさまざまな調査や研究、事例でとうに指摘されていることだ。問題は、ではどうやって状況を改善していくかだが、それがなかなか見いだせない。

 その苦悩は学校教育現場が最も深く抱えている。孤立している教師も少なくない。全国学力テストがこのままの形で巨費を投じて毎年行われ、その度に「当たり前の結果」を確認し合うより、ただちに課題を抱えた現場を支援する方にもっと力を転じるべきではないか。

 学力調査が無用といっているのではない。既に多数の調査・研究があり、合理的なやり方もある。連続悉皆調査はこの2回で十分ではないか。この調査で改めて確認した学習環境状況を踏まえ、しっかりした政策と支援策を打ち出すことに切り替えるべきだ。